近年増加の一途をたどる化学物質過敏症。北里大学でその研究に長年取り組まれ、そして化学物質過敏症治療専門「そよ風クリニック」を
約10年前に開院された宮田先生にお話をうかがいました。
そよ風クリニック院長
宮田 幹夫さん
1936年名古屋市生まれ。
名古屋市立大医学部卒、専門は眼科。北里大学医学部教授を務めていた97年から化学物質過敏症研究開始。2001年同大退職、2009年に全国で唯一、化学物質過敏症専門診療の「そよ風クリニック」開院。
共著に「化学物質過敏症」(文春文庫)など。
森田 現在、全国からの診療予約が3カ月先までいっぱいだそうですね。
宮田 残念ながら、化学物質過敏症を発症される方が増えています。化学物質過敏症の場合、同じ原因であっても人によって症状が異なり、いくつかの症状が広範囲に現れるのが特徴です。自律神経、平衡機能、眼球追従運動、視覚感度、調節能力、呼吸機能など身体の状態や要因の把握からしっかり時間をとるようにしていますので、治療方針を定めるにも時間を要してしまいます。
森田 問診票、拝見しました。ここに記されている 項目は、今のわれわれの暮らし方、環境について問われているように感じます。誰しもが発症する可能性がある状況です。「シャボン玉石けんのおかげで症状が軽減されました」と化学物質過敏症の方からお便りをいただくことも増え、製品はもちろんですが梱包への配慮なども取り組み始めました。
宮田 化学物質過敏症は、感受性の高い、優秀な人がなりやすい病気だと私はとらえています。体に悪いものにきちんと反応している証、「鈍感症」の人たちはマネをして暮らしたほうがよいと思っているくらいですね。私たちの体は自然の中の、自然体。自然が相容れないものへの反応を示していると言えるのではないでしょうか。
森田 2012年に日本では700万人以上の方が化学物質過敏症ではないかという疫学調査が報告されているのですね。注目したのは報告書のタイトル「化学物質に高感受性を示す人の分布の経年変化の評価」です。化学物質過敏症だけでなく、症状という言葉はどちらかというと「悪い(症状)」イメージだと思うんです。しかし「感受性が高い」という捉え方こそ自然なのだなと。自然体、自然だからこそ反応できるのですね。
宮田 治療の方向性として、解毒と代謝改善、過敏性の消去と精神の安定性になります。具体的には、腹式呼吸~歌うとかヨガなど、軽い運動、早寝早起き、充分眠る、くるみやレタスなどビタミンBやキノコなどのビタミンDを摂る、朝に適度に太陽光にあたる(体内時計を合わせる)など、自然にそった暮らし方、自然の中の自然体として暮らし養生すること。患者さんが元気に過ごせる環境は、誰にとってもいい環境であるのは間違いありません。そして、水と空気という環境がきれいというのは大事なんです。
森田 ヒトは飲食物を毎日1~2㎏、空気は毎日15kgを摂取しているという先生のお話からすると、いかに空気が人に影響を与えるのかがわかりやすいですね。食べるものに気をつける方は比較的増えていますが。
宮田 確かに食品添加物や農薬など石油化学製品、化学物質化したものは危険です。農薬など致死量は体重1㎏あたり0.5グラム、その千分の1がミリグラム、ミリグラムの千分の1がマイクログラム、マイクログラムの千分の1がナノグラム、アレルギーがひどくなるのはナノグラムの世界なんです。化学物質は大量と少量で作用が異なります。こういうナノレベルの研究をしていると、現在の環境汚染は救いがたいとまで思ってしまいますね、毎日新しい化学物質が3千種類も開発される。でも安全性は誰も知りませんから。
森田
利便性や安さから自然界にないものを使う、化学物質過敏症やアレルギーなどはそれと共存しがたい自然な正しい反応なのかもしれませんね。
衣類は24時間身に着けています。それを合成洗剤のような化学物質で洗う、化学物質が衣類に残留し害がある。さらに、使用された水は自然に還れない。食品だけでなく暮らしのあらゆるものに気をつかっていかなければなりません。
クリニック内にはシャボン玉商品があちこちに
宮田 食品添加物は肝臓という解毒機能でなんとか対応できる部分もありますが、肌はいわばバリアフリー。合成シャンプーを原液で頭に直接かけるなど本当に危険です。肌はナノレベルのものがたやすく通っていくから怖いのです。胎児への影響も懸念されます。お腹にいるときから危険にさらされている、幼児虐待ならぬ胎児虐待といっていい状況です。親が知らないと子どもは悲劇です。
森田 今使っているものが、本当に安全なものなのか。毎日、大量に流されるコマーシャル。何も疑わず、何も確かめず、なんとなく購入して、なんとなく使用する、これほど危ないものはないですね。
宮田 肌に直接触れるものは特に気をつけてほしいです。その点、石けんは原始的で昔から人の暮らしの中にあり共存してきた歴史があり、安心なのです。生物は自然環境から進化し、自然に適応してきた。しかし結果として進化と文明のミスマッチ病が出現しているのだと思います。自然に戻れ~ルソーの言葉ですが、もはや自然には戻れない‥‥適度に自然に戻れ、です。
森田 正しい知識を身に付けて、自然に適応した、なるべく適応する暮らし方がミスマッチを回避する方法ですね。
宮田 シャボン玉さんにはもっともっと製品を通して正しい情報を積極的にアピールしてほしいし、販売先も広げていってほしいです。これからも応援していますよ。
森田 ありがとうございます。これからもあらゆる機会を通じて伝えてまいりますのでよろしくお願いいたします。