ナチュラル&シンプルライフ(コラム)
挑戦こそ先代から継承する
シャボン玉石けんのDNA
皆さまと共に次の無添加50年へ
専務取締役 髙橋道夫
1956年、福岡県生まれ。
西日本工業大学工学部電気工学科卒業。1978年入社。低迷期だったシャボン玉石けんを支える。1997年に取締役工場長就任。液体石けんの開発にも貢献。2002年より専務取締役就任。
-森田
1974年に無添加石けんに全面切り替えし、今年は50周年を迎えることができました。福岡県若松の本社工場を拡張、同じ北九州市内の複合商業施設内に本社機能の一部移転など、次の50年に向けた新たな一歩を踏み出しました。お客様の期待に応え、さらなる成長を遂げるため、髙橋専務、取締役3名と、それぞれが培った経験を踏まえ、会社の次なる目標についてお話しいただきます。
-髙橋
当社は3つのビジョンを掲げています。〈技術の分野において世界一の石けんメーカーを目指す〉〈石けんと合成洗剤の違いを一般常識レベルまで広げる〉〈石けんといえばシャボン玉というブランドを築く〉。これを実現し、〈シャボン玉石けん〉を高みへと導いていけるよう力を尽くしていきたい。
藤島工場長は、新卒入社以来、製造現場一筋に従事してこられました。
代表取締役社長 森田隼人
1976年、福岡県生まれ。
専修大学経営学部経営学科卒業。2000年入社。関東エリアの卸店・百貨店・スーパー・ドラッグストアなどへの営業、石けん系消火剤の研究開発にも携わる。取締役副社長を経て、2007年より代表取締役社長。
-森田
1974年に無添加石けんに全面切り替えし、今年は50周年を迎えることができました。福岡県若松の本社工場を拡張、同じ北九州市内の複合商業施設内に本社機能の一部移転など、次の50年に向けた新たな一歩を踏み出しました。お客様の期待に応え、さらなる成長を遂げるため、髙橋専務、取締役3名と、それぞれが培った経験を踏まえ、会社の次なる目標についてお話しいただきます。
-髙橋
当社は3つのビジョンを掲げています。〈技術の分野において世界一の石けんメーカーを目指す〉〈石けんと合成洗剤の違いを一般常識レベルまで広げる〉〈石けんといえばシャボン玉というブランドを築く〉。これを実現し、〈シャボン玉石けん〉を高みへと導いていけるよう力を尽くしていきたい。
藤島工場長は、新卒入社以来、製造現場一筋に従事してこられました。
代表取締役社長 森田隼人
1976年、福岡県生まれ。
専修大学経営学部経営学科卒業。2000年入社。関東エリアの卸店・百貨店・スーパー・ドラッグストアなどへの営業、石けん系消火剤の研究開発にも携わる。取締役副社長を経て、2007年より代表取締役社長。
専務取締役 髙橋道夫
1956年、福岡県生まれ。
西日本工業大学工学部電気工学科卒業。1978年入社。低迷期だったシャボン玉石けんを支える。1997年に取締役工場長就任。液体石けんの開発にも貢献。2002年より専務取締役就任。
取締役 藤島聡
1973年、福岡県生まれ。
西日本工業大学工学部電気工学科卒業。1995年に新卒入社。各製造業務に従事し、主に生産設備担当として工場増設に従事。2009年より製造部門の管理業務に従事し、2017年から工場長。2021年に取締役就任、工場を統括。
-藤島
1995年に入社し、ちょうど今年で30年目になります。私が入社した当時の会社は赤字経営から脱却し製造量も段階的に増えていきました。シャボン玉石けんの工場は自前で工場を作っていくというモノづくりの気質があり、その中で私も工場増設や生産性向上などの取り組みを行いながら気質と技術を学んでいきました。
一方で、釜炊き職人一筋60年の井関顧問から直接指導していただいた期間が数年あり、職人という考え方を学びました。井関顧問は長い経験からくる高い職人技術を持っていましたが、それでも常に向上心を持って試行錯誤しながら釜を炊いていました。その姿を見て職人には、常に現実に起きている状況を見て柔軟に判断することや、これまでの方法に捉われず変えていく力を持つことが必要だと学びました。
2003年から液体石けんの製造設備立ち上げに携わりました。液体石けんは劣化しやすく無添加で作るのは難しいという前提でのチャレンジでしたが、前例のない設備を自分たちで考え作っていくという技術者と、何度も失敗を繰り返しながら成功への糸口を見つけようとする職人が融合することで完成したのではないかと考えています。
この技術者と職人のハイブリットがシャボン玉石けんの工場DNAであり、このマインドを継承していくことが、今後、3つのビジョンを達成するための原動力になると考えています。
需要に十分応える生産体制づくりを
-森田
製造部の立場として、次の50年をどのように描いていきますか。
-藤島
水質環境、生物の多様性などがますます社会問題となっていますので、天然由来の原料を使用する無添加石けんは社会に必要な解決策の一つとなると考えています。ですので、無添加石けんの供給を維持し、製造技術を継承していくことが当社の工場の使命だと考えています。しかし、社会の変化やお客様のニーズに対応し変化しなければ、過去石けんが衰退した歴史を繰り返しますので、昔ながらの製法を守りつつ、現代のニーズにあった品質や生産性を常に追求する、それが今後50年のシャボン玉石けんの工場像だと考えています。
-森田
当社は製造業ですから、供給体制の強化は避けて通れません。コロナ禍で、その課題が明らかになりました。最適なタイミング、最高の品質とで最適量を確保できる仕組みづくりを大いに期待しています。
取締役 川原 貴佳
1977年、福岡県生まれ。
九州大学大学院理学府凝縮系科学専攻修了。2007年入社。研究開発業務に従事し、2021年に取締役就任。研究開発、知財、品質本部を統括。石けんリサーチセンター応用研究グループ長、北九州市立大学特任教授。博士(医学)。
無添加石けんへの飽くなき探究を
-森田
川原本部長はキャリア採用でしたね。
-川原
まず、入社して印象的だったことは、シャボン玉石けんはチャレンジ気質が備わる企業風土であるということでした。これは、次の50年を左右するものだと思います。私が入社と同時に立ち上がったのが、商品開発チームでした。これまでの処方開発経験を活かして、新しい商品開発をしてほしいということだったと思います。専門分野である油脂配合を考えるだけでなく、市場調査を行い、企画書を携えて提案し、売上管理まで行うなど、幅広い業務に挑戦でき、製品開発に関して多くのことを学ぶことができました。
私自身は、大学院で博士号の学位を取得し、海外視察も多数経験することができました。今後の企業活動に還元したいと考えています。
-髙橋
2009年には大ヒット商品、〈手洗いせっけんバブルガード〉を開発しました。
-川原
はい、加えて同年には感染症対策研究センターの設立、創業100周年の翌年、2011年には石けんリサーチセンターも開設しました。積極的に産学連携を行い、当社が基礎的な研究にも力を入れる基盤ができた時期でもあったと思います。現在では、宗像市の地島の皆様・宗像市・山口大学・九州環境管理協会と行った産学官民連携、地元の北九州市立大学に共同研究講座を開設するなど、幅広い研究活動を行っています。
私たちは、石けんの新しい機能を発見し、新たな分野へ応用することを目指しています。
石けんの新たな分野へ応用した例として代表的なものに「石けん系消火剤」があります。開発するきっかけとなったのは1995年に起きた阪神淡路大震災でした。何度も試作品を作り実証実験を行いましたが思うような消火効果が得られず、より専門的・学術的な視点で開発を進めるため、北九州市消防局、北九州市立大学、当社らで産学官連携の形を取り本格的に石けん系消火剤の開発がスタートしました。
環境に負荷をかけない石けん系消火剤は2007年に商品化し、森田社長や髙橋専務とともに海外の展示会や学会に出展しPRを重ねてきました。世界中の消防機関や政府機関などから多くの情報を得ることができましたが、大きな転機となったのは2011年の南アフリカで開催された森林火災国際会議(Wild Fire 2011)です。インドネシアの大学の先生から「泥炭火災(※1)の消火に石けん系消火剤を使えないか」との相談を受け、インドネシアで泥炭火災の現場を視察することになりました。泥炭火災によって深刻な環境及び健康被害が発生し、早急に対策すべき事案であることを認識しました。その後、何度も渡航し、調査などを続けていく中で実用化できるという実感を得ることができ、インドネシアでの石けん系消火剤事業がスタートしました。2024年には大規模な実証実験を行うことができ、現地でも非常に高い関心をもっていただき、大きく取り上げられました。インドネシアで着実に成功事例を作り、徐々に世界に広げていければと考えています。
石けん系消火剤を海外に展開するにあたり、現地の方との意思疎通が一番苦労しました。打ち合わせの内容で合意したつもりでも「聞いていない」と言われることも頻繁に起きます。また当時は、実験や調査で、気づけば朝6時から12時間、野外で活動し、それを4日から5日繰り返したこともあり、体力的にきつかったこともあります。厳しい環境においても、真剣に取り組み、長くコミュニケーションをとってきたからこそ、現地の方々との信頼関係が構築されたと思いますし、今では当社のことを応援していただいています。
インドネシアに渡航し始めた当時は、シャワーをひねったら茶色い水が出てくることもよくありました。そういった宿泊先も数年後に行くと、きれいな水が出るようになっているなど変化も楽しんでいます。
石けん系消火剤以外にも、石けんの抗菌性、抗カビ効果など、石けんの新しい機能を見出すような様々な研究を行っています。これらの研究活動を通して、人にも環境にもやさしい特徴をもつ無添加石けんの輪をあらゆる分野、人に広げていきたいですね。
(※1 泥炭とは、枯れた植物などが湿地などの水中で、未分解で蓄積したもの。農地開発などによって泥炭が乾燥し、非常に燃えやすい。泥炭火災は地中で起こっているため完全な鎮火が難しく、問題となっている。)
-森田
石けんリサーチセンターがフル稼働ですね。
-川原
安心安全は、私たちのブランドの象徴です。品質を日々高め続けることにも力を注いでおり、お客様の声を大事にし、より良い商品、サービスをお届けできるように全社一丸となって努力しています。品質管理体制、品質保証体制もさらにブラッシュアップし、世界一の品質の石けんをお客様に届け続けることが、私の目指すところです。
取締役 松永 康志
1973年、福岡県生まれ。
早稲田大学社会科学部卒業。2009年入社。商品企画、広告、広報、販促などのマーケティング業務に従事。2021年取締役就任。 サステナビリティ推進。営業本部(マーケティング部、営業部、通信販売や工場見学などを行う石けん推進部)を統括。
石けんへの認知・理解・共感を拡大
-髙橋
松永本部長も入社以来、会社の組織改革にも大きく貢献してこられてきましたね。
-松永
上の娘が生まれて半年後、家族で福岡の実家に帰省していた際、東京から連れて帰った犬と実家の犬を散歩している時に、ふと「工場見学をしてみたい」という思いが浮かびました。田んぼのあぜ道から電話をかけ、翌日に家族とともに工場見学をさせていただいたのがシャボン玉石けんでした。その時点では、まさか自分がこの会社で働くことになるとは思ってもいませんでしたが、約2年後にはシャボン玉石けんの一員となり、現在に至っています。この巡り合わせは、まさに不思議なご縁としか言いようがありません。
私がキャリア採用で入社を希望した際、もし高橋専務とのご縁がなければ、現在の私のキャリアは存在していなかったかもしれません。採用が公募されていないにもかかわらず、東京で数回にわたり丁寧に面談をしていただいたことには、深く感謝しております。
2009年に入社した当時、マーケティング部門が存在しておらず、商品開発、広告、広報といった業務が分散していました。そこで、それらを統合できる部門を新たに立ち上げました。ほぼすべての商品をリニューアルし、商品パッケージや広告では、単に商品の特徴を伝えるのではなく、消費者ベネフィットを伝えるようにしました。最初に手がけた広告は、森田社長に会社の象徴として登場してもらい、「無添加を疑え。」というインパクトのある強いメッセージで社会に訴えた新聞広告でした。森田社長は、会社の理念や無添加石けんを広めたいという強い信念を体現し、積極的に外部での講演活動やテレビや新聞、雑誌、ウェブなどのメディアの取材対応を行っています。
社長が丁寧に会社の考えや想いを社会に発信し続ける姿勢は、私たち社員にとっても大きな指針となっています。
ブランディングに関しては、広告だけでなく広報活動にも力を入れています。また、営業においては、ID-POSなど消費者の購買行動を分析するデータや当社の研究開発部が外部の大学や研究機関などと連携して得られた石けんの効果や有用性などのエビデンスに基づいた提案を行っています。さらに、最近では脳科学(ニューロマーケティング)を取り入れた販促にも取り組んでいます。長年当社の商品を使用し、応援してくれているお客様を集めたファンミーティングを全国で開催しています。また、一般消費財だけではなく、病院やクリニック、歯科医院、介護施設などでも当社の石けんのご採用が増えてきています。
挑戦、初志貫徹はシャボン玉DNA
-森田
講演などでよく「なぜ常に新しいことに挑戦し続けるのですか」と質問をいただきますね。
-松永
世界は気候変動や脱炭素、海洋プラスチックごみ、生物多様性など、様々な環境問題や課題に直面しています。森里川海を守るためにも、生分解性が高いサステナブルな無添加石けんは、今後ますます社会的なニーズが高まり、その価値は社会全体やお客様の課題解決に直接貢献できるものだと確信しています。しかし、これらの問題は当社一社だけではできるものではありませので、様々な団体や行政、大学、企業などとも連携を深めながら課題解決に努めてまいります。国内市場においては、当社商品をいつでもどこでも手に取れる環境を整えるため、小売業者様や卸売業者様とのパートナーシップをさらに拡大していきます。今後も石けんの魅力を伝えるため、新たな挑戦を続けるとともに、人と自然に優しい無添加石けんの普及を推進していきます。また、海外市場への展開も積極的に進め、グローバルな視点でさらなる成長を目指しています。仕事における失敗は数多くありますが、長い目で見ればそれらは進歩や成功への過程の一部だと考えています。当社の行動指針の一つ「常に成長や進化を求めて、失敗を恐れず挑戦する」という姿勢を、私自身も今後も持ち続けていきたいですし、社員にも会社・組織・個々の成長の機会を提供し続けたいと考えています。この挑戦し、成長を感じながらワクワク働くことは社員のウェルビーイングにもつながると信じております。
-髙橋
実際に、行動してみて初めてわかることは多いですが一番大切にすべきなのはお客様視点を忘れないこと。この原点に徹し、今後も社員一人ひとりが、挑戦を続けてまいります。
-森田
チャレンジを通じて、楽しく働きがいある企業文化を醸成し次世代にも浸透させ、人々の健康と地球環境・生物多様性を守りながら、持続可能な社会に貢献することをお約束します。
「健康な体ときれいな水を守る。」という使命を胸に、次の50年も皆さまに愛される企業を目指してまいります。どうぞ変わらぬご愛顧を何卒よろしくお願い申し上げます。